こんにちは。大磯でぬくぬくと暮らしつつ、たまにバックパックを背負って海外をふらつくLuisです。
最近、YouTubeで中国旅のVlogをいくつかアップしています。見てくださった方、ありがとうございます。
▼先日UPした中国・梅州の旅
この動画の中にこういうシーンがあります。


昨年も南米編やネパール編を公開してましたが、動画をご覧になって、もしかすると一部の方はこう思ったかもしれません。
「この人、なんかいつも犬にビビってないか?」と。


他にもたくさんあったがこの辺で。
そうなんです。
海外の様々な路地裏や放置された空き地など、遠くの方に犬がいたとします。すると動画の中の私はあからさまに動揺し、接触を避け、時にはルートを変更して逃げています。
画面越しに「ビビりすぎでしょ」とツッコんだ方もいるかもしれません。
でも、どうしても犬を警戒せざるを得ない、深い(そして情けない)トラウマがあるのです。
今回はその「理由」について、少し振り返ってみたいと思います。
悲劇は突然に。コソボ共和国での野犬の襲撃
あれは2024年の6月。東ヨーロッパのバルカン半島、コソボ共和国を一人で旅していました。
フランスからイタリアへ渡り、アドリア海沿岸のバーリという街から船で対岸のアルバニアに入国、そのままバルカン半島の国々を旅する計画でした。
日本ではあまり馴染みがない国々で、いったいどういう場所なのか未知の世界でした。
アルバニアとそのお隣の北マケドニアは本当に素敵な国で、自然や文化もさることながら、それぞれの国が持つ歴史的な背景も独特で知れば知るほど好きになりました。

北マケドニアの北部国境からコソボ共和国の首都プリシュティナに入り、さあ、この国はどんな感じだ?とワクワクしながら街へ移動しました。
コソボは1990年代末の紛争を経て2008年に独立を宣言した国ですが、今でも一部の国からは「国家」として承認されていない複雑な立場にあります。
面白いのは、EU非加盟なのに日常通貨としてなぜか「ユーロ」が使われている大らかさ。
内戦の混乱から復興しつつあるものの、社会インフラはまだ発展途上で、ところどころに「アラ」が目立ちます。
そのアラの一つに「野良犬が放置されている」という点があります。
プリシュティナの街を歩いていたら、他の近隣諸国や欧州諸国では見かけなかった野良犬が、やたらと通りをうろついていたんです。
その時もなんか嫌な予感がしたのですが、人通りも多いし「夜に出歩かなければ問題ないだろ」くらいに思ってました。

夜ごはんにカフェに入って軽くチキンサンドを食べたけど、どうも物足りない。
MAPで検索したら近くにスーパーがあったので、何か夜食を買って宿で食べようと思い、行ってみることにしました。
しかし日も暮れかけて薄暗くなる時間帯。
急いでスーパーに行って、さっさと買い物を済ませようと近道ルートを検索。
すると大通りと大通りの間にある公園を突っ切って行けばだいぶ近道になることがわかり、意気揚々とそのルートを進みました。
しかしその公園は…
なんというか、一言で言えば「うすら怖い」雰囲気。
強盗が出そうとか変質者がいそうだとか、そういうのじゃなくて、何か「ホラー映画のロケに使われそうな」いや〜な雰囲気が漂ってました。
人影もまばらで、辺りが次第に暗くなっていく中、草っ原の影に浮かぶのはなんとも薄気味悪い石造りの建物。

これはもともとセルビア正教会だったけど、コソボ内戦でセルビアと敵対したため、今では管理もされず廃墟になっている建物でした。
- 野良犬の多い街
- うっそうと茂る草
- 廃墟の建物
はい、当然こういう場所は野良犬たちの格好のナワバリとなってしまいます。
で、何も知らずのんきに一人でテクテク歩くよそ者のわたくし。
せっかくなのでその教会の不気味さを動画に撮ろうとちょうどカメラを回していたところでした。
1匹の野良犬が少し遠くにいたので、カメラを向けて「あそこにヤバそうな野良犬がいますね〜こわっ」とか呟いていたところ、その犬とピタッと視線が合うわけです。

犬は「あに見てんだテメェ〜おらぁぁぁぁっ」といきなり吠えながら突進してくるじゃありませんか。

「やんのかゴラァァァァァ」
ただ、犬1匹なら、「シッシッ」と言いながら静かにその場を離れれば済みそうな状況で、気持ちはまだ落ち着いてました。
しかし彼らにとって僕は「ナワバリを荒らす敵」同様。1匹の咆吼が緊急アラートとなり、次の瞬間、草むらの影から大量の(10匹以上はいたと思う)チンピラ集団のような野良犬どもが一斉に狂気の雄叫びを上げながらこちらに向かってきたのです。
この瞬間、生物としての命の危機感が一気に頂点に達し、猛ダッシュで逃げる自分がいました。
映画「28日後」をご存知でしょうか?ゾンビなのにメチャクチャ足が速いという地獄のようなシチュエーションを描いたホラーですが、その時の僕はまさにその映画の中に迷い込んだかのようでした。まあ、ゾンビじゃなくて野良犬ですが。
しかも最悪なことに、走る衝撃でスマホを途中で落としてしまったみたいです。

とにかく夢中になって逃げていたところ、突如左足に強烈な激痛が走りました。
「イテッ!」
見ると、履いていた白いパンツの左足のふくらはぎ部分が赤くまだらに染まっています。

「やばい、噛まれた!」
走ることもままならない状況になりスピードを緩めたけど、犬たちはその一撃で満足したのか、あるいは落としたスマホに気を取られたのか、幸いにもそれ以上追ってくることはしませんでした。
血が足首に滴り流れ、徐々に痛みが強まってきて、近くにあったベンチにへたり込みます。
僕が血まみれの落武者のような姿になっているのを、通りがかった心優しきコソボの皆さんに助けていただきました。

あるおば様はティッシュやハンカチを傷口にあてて止血をしてくれて、ある男性は僕が落としたスマホを拾いに行ってくれました。(幸いスマホには傷がなく無事でした)
その男性は英語で何があったのかを詳しく聞いてくれました。そしてその話を聞いていた別の女性がすぐに病院に電話をしてくれて、10分後くらいに救急車が到着。
救急隊員が応急処置を施し、そのまま病院へ搬送…。

「えっ!?おれ、救急車乗ってる。しかもコソボで(半笑い)」
興奮が冷めてきて冷静さを取り戻すにつれ、この異質なシチュエーションにドン引きする自分がいました。
海外で野犬に噛まれる。
バックパッカーにとって、これほど背筋が凍るイベントはありません。なぜなら、頭の片隅に常にチラつく恐ろしい三文字があるからです。
「狂犬病」
発症したら致死率ほぼ100%と言われるあの恐ろしい病気です。
…さて、病院に到着して、てっきり手厚い処置をされるのかと思ったのに、実際はなかなか手厳しい扱いを受けました。
応急処置の包帯を解かれ、改めて消毒などをして再び包帯が巻かれましたが、その巻き方が「素人かっ!」というくらい適当で杜撰な巻き方。
そして足がめちゃくちゃ痛いのにとにかく歩かされ、病院内のあちこちの部屋へたらい回しされたりもしました。

「大丈夫か、この病院は…!?」
しかし後で調べて分かったのですが、この病院は日本の援助で建てられた立派な病院でした。
でもここは日本と違う海外。患者への対応の仕方はまるで異なります。
余談ですが、かつてインドで食中毒になって死にかけたことがあり、怪しい病院に入院した時を思い出します。
看護師なのかなんなのか普段着のおっさんが次々と現れ、点滴を打たれた後にゴミ箱のゴミを腕に巻かれたりして散々な思いをしました。
インドで入院した時の看護師がどうみても看護師に見えないおっさんばかりだった件
話を戻します。
最終的に「感染症病棟」という建物に移され、そこで英語を喋る女医さんに狂犬病ワクチンを打ってもらったのですが、そのワクチンも近くの薬局に自分で買いに行かされたのでした。
腰のあたりに一発(おそらく免疫グロブリンというやつ)、そして腕にもう一発注射(こっちがたぶんワクチン)。すると「Finish!It’s Over」終わったよ。と。それ以上何の説明もありません。
ただの怪我ならこれで解放されて「あー、良かった」となりますが、犬に噛まれた後ではそうもいきません。
待ち時間が長かったのでスマホでいろいろ情報を検索したのですが、狂犬病ワクチンは必ず3回か4回に分けて定期的に打たないといけない、ということらしいのだが。コソボの病院では1回で終わりらしい。
「って、そんなわけないよな…!?」
▼ここまでの話を動画にまとめてあります。
心が折れた一人旅。そしてなぜか「飛んでイスタンブール」
その後、這々の体で宿に戻り眠りにつこうとするけど、興奮状態が冷めやらずなかなか眠れない。
「本当にこれで大丈夫なのか?」「ワクチンは一発だけでいいのか?」「このまま旅を続けて平気なのか?」
不安がぐるぐると渦巻きます。
翌朝目覚めてみると、噛まれた左足のヒザ裏が痛くてまともに歩けないことに気づく。
膝をまっすぐに伸ばして歩くことができず、常に曲がった状態にしておかないと激痛が走る。
いわゆる歩行困難に陥ってしまいました。
狂犬病の心配もあるし、まともに歩けないし…
常に「なんとかなるさ(ケセラセラ)」の精神で旅をしてきたけど、さすがに死の危険がある場合は悠長なことを言ってられない。
「もうあかん。一人旅はここで終わり。帰るか……」
結局、帰国を決意し航空券を検索し始めました。
しかし、ここで持ち前の「適当(調整)主義」がフルスイングで発動。
「せっかくだし、トルコに寄って行こう」
なぜトルコだったのか?
実は大韓航空のマイレージ(SKYPASS)が貯まっていたので、トルコのイスタンブールから大韓航空でソウル経由で帰国しようという魂胆です。
コソボからイスタンブールはLCCで別途チケットゲット。
しかしイスタンブール発の大韓航空で予約できる便が早くて1週間後。
つまり、実質6日間イスタンブールにいないといけないという…。
- 歩行困難だが超ゆっくりなら歩ける
- いざとなればタクシーだ(普段はバスか徒歩派なので絶対乗らない)
- 動き回らずホテルでじっとしていれば良い
- 狂犬病ワクチンはイスタンブールの病院で打てば良い
- トルコ料理は美味しい
これらの「調整」が一瞬で頭の中を駆け巡り、気づいたときは「チケット購入」ボタンをクリックしておりました。
この時の脳内鼻歌は庄野真代さんの「飛んでイスタンブール」だったことは言うまでもない。
(余談だけど、犬に噛まれる前の目論見では、バルカン半島を旅した後にルーマニアのブカレストからLCCを乗り継いでドバイ、インド、マレーシアを経由して帰国する算段を立てていて、マイレージは使わず温存しておこうと思っていた。)
イスタンブールで狂犬病ワクチン。そして帰国時に見舞われた悲劇
歩行困難のままイスタンブールに到着。
狂犬病ワクチン接種可能な病院を調べ、早速翌日その病院へ。
トルコの病院もなかなかスパルタで、日本の病院のような患者への気遣いが乏しい気がしました。
医師の問診を受ける部屋に待合室みたいなのがなくて、患者さんたちはその部屋の前に列をなして、ひたすら立ちながら待つしかありません。
僕も歩行困難でしたが、松葉杖をついている人や、ご高齢のおばあちゃんとかも立ちっぱなしで過酷そうでした。

病院ではあまり英語が通じず、翻訳アプリでなんとかコミュニケーションを取りました。
しかし問診をしてくれた女医さんは流暢な英語を喋れたので、話もスムーズ。
すぐに狂犬病ワクチンのプログラムを組んでくれました。

しかしここで一つ問題発生。
コソボでワクチンを打ってくれた医者が大雑把過ぎて、診断書もめちゃくちゃ字が汚くて解読ができない(なんかアルバニア語とかも混じっている)。その診断書を女医さんに見せても「これは何て書いてあるの?」とこちらが逆に聞かれて困りました。
結局、メジャーな狂犬病ワクチン「ラビピュール」というやつで今後のプログラムを組み、スケジュールに従ってワクチン接種することに。
(後述しますが、このことは日本に帰国してからも問題があって大変でした)
コソボで1回目を打って、その日を起点に、2回目、3回目、さらに日を置いてもう一回打つというスケジュール。
すなわち、イスタンブールで2回目と3回目の分を打つことになりました。
問診の後、同じ病院の敷地内にある「狂犬病ワクチンセンター」というところに行って「2回目」のワクチンをブスッと一刺ししてもらい、その日の接種は完了。あとは3回目の分ですが、それは帰国の日の午前中に病院に出向き、同じように打ってもらいました。
(ちなみに3回目のワクチンの時、ドアが閉まってたので別の病院スタッフさんに開けてもらったところ寝起きのダルそうな医者が出てきて、やっつけ仕事風にブスッと打ってくれました。いろいろ雑な感じが日本と違いますね。)

さて、イスタンブールでも相変わらず歩行困難で基本的にホテルでジッとしてました。
しかし外は天気も良く「せっかく世界遺産の街にいるのに、何もしないのか?」という悪魔の囁きが終始頭の中に漂っておりました。
ここで自分の中の調整主義勢力が勢いを増して、「なんとかなるさ精神」を後押ししてくれちゃいました。
結局あちこち観光に出かけてしまい(歩く速度は通常の5分の1程度)、最後にガラタ橋のたもとでサバサンドを食べて、ちゃっかり旅情に浸りまくったのでした。

さて、帰国の日。
前述の通り病院で3回目のワクチン接種を受け、夕方空港へ。
しかしこの時から妙に体の調子がおかしくなり、食欲がなくなり吐き気を催すように。

飛行機の中ではさらに具合が悪くなり、頭痛や眩暈、下痢、そして熱まで出てくる始末。
「これは…。ワクチンの副作用?それとも、ま、まさか、狂犬病の初期症状なのか!?」

飛行機の中ではネット検索もできないので、どんどん悪い方に考えてしまって「狂犬病で死ぬのか…」と、最悪な結果も考えたりして、心身ともにどん底状態でした。
そんな状況のまま帰宅を果たし、高熱と下痢でそのままぶっ倒れました。
妻は「この人、犬に噛まれて死ぬんだ…。」と本気で思ってたようで、近くの神社に毎日お参りに行ってくれてたそうです。(心配かけてマジごめん)
衝撃の結末
帰宅した翌日、地元の病院に行って診察を受けました。
「狂犬病」と診断されて東京の権威ある病院とかに移されて入院するのかもしれない…なんて不安になりながら医師の問診を受け、血液検査などの結果を待ちました。
診断結果はこうでした。

海外旅行帰りの患者を多く診察するお医者さんだったけど、「コソボ」というワードが面白かった珍しかったらしく、このような記述になったようです。
下痢と発熱はイスタンブールで食べたサバサンドにあたったのが原因。ただの旅行者下痢症という診断でした。(体が弱っていて免疫力が落ちていたのが影響したらしい)
コソボの診断書が汚すぎて、まさかの「最初からやり直し」に
狂犬病は発症しておらず一安心だったのですが、ここでさらなる不条理な悲劇が僕を襲います。
やはりコソボの医師が書いた診断書が汚過ぎて、日本の医師には一切解読ができないのです。イスタンブールで打ったワクチンの詳細も判別がつかず、医師からは非情な一言が。
「これだと打った証明にならないので、日本で最初から打ち直しましょう」
……嘘でしょ?
結局、日本で認可されたワクチンを最初から4回分、完全に打ち直す羽目になりました。
コソボ、トルコ分も合わせると、なんと短期間に計7回もの狂犬病ワクチンを体に入れることに。さらに念の為破傷風のワクチンも数回接種。
某流行病のワクチンは一回も打ったことないのに、まさか狂犬病ワクチンを7回も打つ未来が待っていようとは、人生本当に何があるか分かりません。
足の痛みは内出血の血が固まってしまったのが原因で、1ヶ月後に自然治癒して、元通り歩けるようになりました。

しかしコソボでのホラー映画みたいな出来事とイスタンブールで狂犬病に怯えた時のことがフラッシュバックして、いまだにトラウマが抜けません。
その後も旅を続けていますが、旅先での野良犬や放し飼いの犬はもちろん、大人しそうなワンコや小っこい子犬にも恐怖心を抱いてしまいます。
家の近所を散歩する時も犬の散歩をしている人とは一定の距離を置いて歩きます。
▼イスタンブールでサバサンドを食べて具合が悪くなりながら帰国した動画
今回のケセラセラ 流れに身を任せれば、大抵のことはなんとかなる(けど犬は怖い)
結果として、僕は今もこうして元気に生きていますし、狂犬病にもかかりませんでした。 心が折れて一人旅を断念したはずなのに、トルコで美味しいものを食べ、ちゃっかり別の国の空気を楽しんで帰ってきたわけですから、人生何が起こるか分かりません。
以前、当ブログで「迷ったら『自然』か『不自然』かで考えると楽」「流れに身を任せていれば大抵のことはなんとかなる」と書きました。
野犬に噛まれたことは大パニックでしたが、それに逆らわず「もう無理!」と流れに身を任せてトルコへ飛んだ結果、これもまた一つの笑い話(とVlogのネタ)として昇華できた気がします。
というわけで。
僕が海外の旅Vlogで、遠くにいる犬にすら異常なまでにビクビクしているのは、この「コソボ野犬アタック&トルコ逃亡劇」のトラウマが完全に刻み込まれているからです。
これからこれらの旅動画を見る方、あるいはもう一度見直してみようかなという方は、どうか「あぁ、この人、過去にコソボで噛まれてトルコまで逃げたんだよな…」という温かい(?)目線で、私のチキンっぷりを笑ってやってください。
それでは、また次の記事(か動画)で。